日本語版『21世紀の資本』はなぜ中国語版の5倍の価格なのか

f:id:tsuke_zura:20150114111415j:plain

 日本語版が出て年末の必読書として話題になったトマ・ピケティの『21世紀の資本』。本のレビューの中で、なんで日本語版は英語版に比べてあんなに高いんだ、という批判というか苦情があったので、各国の同書籍の価格を比較してみました。


■国別『21世紀の資本』販売価格
 中 1,250円 (65.00元)
 伯 1,656円 (R$36.96)
 印 1,714円 (INR895.00)
 加 2,656円 (CDN$26.30)
 英 2,698円 (£14.98)
 西 3,347円 (€23.75)
 仏 3,523円 (€25.00)
 米 3,540円 ($29.67)
 独 4,220円 (€29.95)
 丁 4,312円 (€30.60)
 日 5,940円

*伯:ブラジル、西:スペイン、丁:デンマーク
*各国版アマゾンでの1/14現在販売価格。電子書籍でなく紙の本。1/14現在のレートを使用


 思いのほか、国によってずいぶん違うんですね! 苦情があったとおり、日本が一番高くて5,940円なのですが、いちばん安いのは中国で1,250円。およそ1/5という安さで、もちろん円安という要因もありますが、同じ中身の本でここまで差がつくのも不思議なところがあります。アマゾンで売っているなら、海賊版じゃない、よねえ。

 なぜ日本の本は高いのか。大きく3つの理由があるんじゃないかと思うわけです(理由といえばたいてい3つあるものですよね)。

 まず思いつくのが定価販売を小売店に強いることができる「再販制度」です。表の中では日本のほかにフランス、ドイツ、デンマーク再販制度が導入されているので、これらの国が上位に来るのは納得です。そういう意味では再販制度のないアメリカの価格は意外と高いといえるかもしれませんね。

 あとは要するに、「その値段でも売れるから」というのがあるのでしょう。日本人はあの値段でも買うだろうと考えたからあの値段になっているわけで、現にアマゾンの1/14時点の売上ランキングでも全書籍中4位と、非常に売れているようです。

 つまりは、この数字だけを見ると、(ベストセラーになっている日本以外の国も含めて)この値段でも安すぎた、ということかもしれません。このような本の読者層にはgより高いrの恩恵を受けた層が多く、あまり価格を気にしないで買うヒトが多い、などと読んでもないのに知ったかぶって書いてみたりするわけですが。はい。

 3つめの理由は、「その値段じゃないとペイしない」です。あるいは売れるものを売れるうちに売っておかないと、他の(赤字の)本を出せない、とでもいいますか。

 日本人ってなんとなく他の国のヒトに比べて本を読んでいそうな印象がありますが(ありますよね?)、どうやらぜんぜん読んでないらしいです。主要30カ国を調査対象としたNOPワールドカルチャースコアによると、週の読書時間は、グローバル平均は6.5時間のところ、日本は4.1時間で30カ国中29位と非常に低い値です。みんなちっとも本を読まないので本の値段が高くなっちゃう、ということもあるのかもしれません。ちなみに本の価格が最も安かった中国は8.0時間と全体でも3位。日本人の倍、読書家なんですね。

 そんなこんなで世界一高い『21世紀の資本』日本語版。本棚の飾りとして買ってみるのも一興ではないでしょうか。


*中国語版『21世紀の資本』
*NOP World Culture Score(TM) Index Examines Global Media Habits