おいしそうなコンビニ事業を手放すJR西日本

JR西が下ったセブンイレブン軍門“改札の壁”打ち破るメーカー支配力(日経ビジネス


 JR西日本のコンビニ「ハート・イン」と「キオスク」がセブンイレブンにとって代わられる、というニュースがありました。


>「セブンプレミアムの、製造にまで踏み込んだその商品開発力は大きな差」。真鍋社長、井上社長はセブンの強みの筆頭として、同社のプライベートブランド(PB)、「セブンプレミアム」の名を挙げた。


 こちらの日経ビジネスの記事では、その要因をセブンの商品開発力に見出しています。確かにPBを筆頭に、一味違う商品がセブンの棚に並んでいますよね。最近では食パンやコーヒーのヒットもありました。でもじゃあ、なんでセブンが組んだのはJR東日本じゃないのか、という疑問もあるわけです。

 西日本の「ハート・イン」に対応する、東日本のコンビニは「NEW DAYS」ですが、数年前、(24時間営業でもない)NEW DAYSの日販が、その立地を武器にセブンを抜いたと話題になりました。JR東日本はセブンに頼るどころか、セブンよりも(ある意味)強いコンビニチェーンを既に持っているのですね。

 ならばなぜ、そのようなおいしい事業になり得るコンビニ事業をJR西日本は手放してしまうのか。ここで両社の中期計画を見てみたいと思います。


「グループ経営構想V(ファイブ) 〜限りなき前進〜」について(JR東日本、2012/10発表)
JR西日本グループ中期経営計画2017(2013/3 発表)


 鉄道事業は今後、日本の人口減少という危機に直面しています。このような中JR東日本はセグメントを運輸業、駅スペース活用事業(NEW DAYSなど)、ショッピング・オフィス事業(Suicaなど)、その他(海外展開や鉄道車両など)の4つにわけ、本業の運輸業以外の育成に注力する姿勢を見せています。このようにリソースを投入した結果、NEW DAYS は強い事業に育ったということができるでしょう(中計のタイトルがちょっと恥ずかしいカンジなのはさておき)。

 一方JR西日本の中期計画の最初に出てくる言葉は「信頼回復に向けて」です。事故で失った信頼を取り戻すため、「安全」「CS」「技術」に力を入れることが基本戦略ということで、まだJR東日本のように新たな領域に踏み出していくような余裕はないようです。

 このような、両社の置かれた状況の違いから、今回の提携に至ったのではないでしょうか。本業の鉄道事業の基盤の強さという違いもあると思いますが、事故の後遺症は、新事業展開にも影響を及ぼすんですね。