主張を通すためなら、多少ムリがあるデータでも勢いで乗り切ってみたり
ビジネスでも何でも、ある主張を通すには、それっぽさを伴うデータの裏づけが重要だったりします。その引用の仕方に多少無理があっても、勢いで乗り切る、という手もあるわけです。
就職ランキングは「20年前の」を見てみよう 「今では…」の企業も大人気だった(J-CAST)
こちらの記事では、「就職ランキングから今後衰退していく企業を知ることができる」という主張をしています。つまり、ランキングに乗る企業は成長期のピークにあり、その後衰退していく、という仮説を提示しているのです。筆者は、その証拠ということで、「例えば、20年前の人気企業ランキングの結果をお教えします」と、1993年の文系のランキングを載せています。
1位:ソニー(笑)
2位:東京海上
4位:三井物産
5位:三菱商事
6位:三菱銀行
7位:NTT
10位:伊藤忠商事
(笑)をつけているのはこの筆者で、その後苦境に陥った企業ということらしいのですが、なんだかちょっと失礼ですよね。それはさておき、仮説についてはなるほどとも思うのですが、ここでいくつか疑問が浮かんできます。
1)10社中(笑)マークが3社だけなのに、ほらごらん、というのは強引過ぎないか
2)データのソースはどこなのか
3)20年前なら1994年のランキングじゃないのか
4)なぜ文系だけなのか
1)については、ランキングに入っていてその後伸びている会社も多く、またランキング圏外の会社のうちその後苦境に陥った会社の比率との比較もなく、またそもそも「苦境」の定義もあいまいなので、因果関係があるとは実際いいにくいのでしょうが、学術論文ではないのでまあ、と。
2)については、よくわからないのですが、ちょいとググると以下のページが出てきて、ランキングの内容も一致しているので、ここなのかなと。このページも一次データではなく、おそらくどこかの引用なのですが、それがどこか示されていないので、孫引きしたこの筆者も書けなかったのかもしれません。
過去30年の就職人気企業ランキング(就職・転職情報ナビ)
3)は結構気になります。ということで、上記のページから、ホントの20年前、1994年の(文系)ランキングを引用してみます。
1位:三菱銀行
2位:東京海上火災
3位:三菱商事
4位:三井物産
5位:伊藤忠商事
6位:日本生命保険
7位:第一勧業銀行
8位:日本興業銀行
9位:三井不動産
10位:日本電信電話(NTT)
おお、20年後の本日においてもそうそうたる面々。現在では社名は変わっている会社も多いですし、またイノベーションで時代を牽引している、といった企業ではないかもしれませんが、少なくとも(笑)などつけられない企業がならんでいます。まあ、そりゃあ、1993年を引用しちゃいますよね。1994年だけ見たら、「就職ランキング上位の企業は長期的に安定する」という結論にもなりかねないですからね。
4)についても、1993年の理系ランキングを同様に見てみると、
1位:ソニー
2位:日本電気
3位:日立製作所
4位:松下電器産業
5位:東芝
6位:富士通
7位:三菱重工業
8位:三菱電機
9位:川崎重工業
10位:トヨタ/ホンダ
という結果で、さすがにその後力強く輝きを増したトヨタなどが入っているので引用しなかったのでしょうか。あるいは、半導体関係はのきなみ(笑)をつけることもできたのかもしれませんが、この筆者は経営コンサルタントらしいので、潜在クライアントをそこまで減らすこともないか、と考えたのかもしれません。
ということで、主張すべきことに対してどうムリしてそれっぽいデータを持ってくるか、というお話でした。しかしなんでこの記事2013年中に書かなかったのかな……。