【読書メモ】 姜在彦『歴史物語 朝鮮半島』朝日新聞出版

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 前回は台湾に行った際読んだ本でしたが、今回は今年3月に韓国に行ったときに読んだ本です。昨今の韓国本ブームで、本屋にもやたらたくさんの韓国関連本が並んでいるのですが、内容は盛大にディスる本ばかり。そんな本を持っていくとイミグレで止められそう、というか、単にふつうの基本的な歴史の本が読みたかったので、アマゾンのレビューを元に探すことにしました。

 韓国関連本ってなぜかほとんどが韓国大好きな人が書いた本か韓国大嫌いな人が書いた本で、普通の本がなかなかみつからなかったのですが、そんななか比較的客観的という評価をされていたのがこちらの本。版元がややひっかかったものの、読んでみることにしました。

 この本では古代から日韓併合の直前までの朝鮮史が描かれています。読むに、どうもいろいろと残念なエピソードが多いんですよね。

 1582年に兵曹判書(いわば国防長官)に任命された李珥(イ・イ)は、10年以内の「土崩の禍」(とんでもないわざわい)を予見し、10万人傭兵論を展開するが、東人派の柳成龍(リュ・ソンリョン)らの反論にあい、失脚してしまう。しかしまさに傭兵論から9年後、豊臣秀吉による壬辰倭乱文禄の役)があり、李珥の予想的中。朝鮮の民衆の寄せ集めの兵では、戦国時代を潜り抜けてきた日本軍には勝てず、まさに「土崩の禍」となってしまったと。李珥の話を聞いておけばイイのに、と思っても時すでに遅しというやつです。

 また18世紀の朝鮮では、中国王朝(大中華)とそれに並び立つ朝鮮(小中華)が世界の中心であり、それ以外は夷狄(未開の野蛮人)とする「小中華主義」が広まっていたと。明王朝に対する忠誠から、中国王朝が清に替わった後も、清国すら夷狄であり、そこから物事を「学ぶのが恥ずかしい」とも言われていたようです。どれだけ「上から」なんだと。これに対して「北学派」という一派があり、「夷狄」であっても優れたものは学ぶべきだと。しかしまたこの学派も例によって失脚してしまい、筆者も

十九世紀にはいって「倭夷」(引用者注:日本人の蔑称)や「洋夷」(同:欧米人の蔑称)の先進文明から学ぶということような思想が普及していたなら、朝鮮の「近代」は大いに変わっただろう。

と残念がります。

  このような、知っているようで知らない(わたしだけ?)朝鮮史、後世の人が学べることも多いのではないでしょうか。あ、ご飯は美味しかったですよ(そんなのばっかり)。