卵かけごはんの誘惑

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 お昼ごはんで入った横浜駅西口の定食屋さん。そこはテーブルの上に生卵が積んであって、お客さんは思い思いに卵かけごはんをエンジョイできるというお店でした(おかわり自由!)。おいしいですよね、卵かけごはん。

 この卵かけごはんを日本で最初に食べたといわれているのが、岸田吟香という新聞記者であり事業家であり教育家だとか。よく「これ最初に食べようと思った人すごいよな」などといいますが、その「すごい人」のうちの一人がこの岸田先生みたいです。

 こんなにおいしいのに、卵を生で食べるというのは、ほぼ日本に限られた文化みたいですね。他の国の人たちは、卵を生で食べるなんてとんでもない、というカンジなのだとか(韓国のユッケや、フランスのミルクセーキなど、一部例はあるようですが)。卵に限らず、魚や牛肉、鶏肉、ホルモンなど、日本人はいろいろなものを生で食べたがるヒトタチのようなのですが、どうしてこのような文化が生まれたのでしょうか。

 魚の生食でよく言われるのは、新鮮なものが簡単に手に入る環境にあったから、というはなしです。日本は海に囲まれていて、新鮮な魚がいつでも獲れたと。であれば、新鮮な卵が手に入る様々な国の養鶏場の近くでは卵の生食が行われていてもよさそうですが、どうもそうなってはいないようで。

 どうも、日本人は「生」が好きなヒトタチなのですね。英語で言う Draft Beer(直訳すると「樽から注ぐビール」)も日本語では「生ビール」ですし、他にも「生茶」「生蕎麦」「生チョコ」「生キャラメル」など、ポジティブな意味を含んだ「生」という言葉に溢れています。

 日本人の自然観として、自然との対立ではなく同化を目指そうとする、と言ったのは寺田寅彦ですが、このような自然観から、食べ物にしてもより自然に近い「生」のものを好むようになったというのは当然のことなのかもしれませんね。


岸田吟香(Wikipedia
寺田寅彦『日本人の自然観』青空文庫