[読書メモ] 菅野寛『失敗の経営学』日本経済新聞出版社

 ビジネススクールでお世話になった菅野先生の新刊。どうすればビジネスは失敗するか、について書かれた本で、それを回避することで成功確率を上げよう、と主張されています。

 ところでビジネススクールに行っているなんていうことを人に言うと、「じゃあビジネスを成功させるにはどうしたらいいの?」なんて挑戦的に聞かれることがままありまして、そんな時には「こうすれば成功する、なんてことはないんだけど、こうすれば失敗する、ということはあるので、それを学んでいるんだよ」などと応えたりしていたわけであります。

 ここで内心、「じゃあどうしたら失敗するの?」と聞かれたらどうしようなどと焦っているわけですが、まあ往々にして話はそこまで行かないのでほっと胸をなでおろすことになるのです。そして、こちらの本ではその失敗のパターンを、(1)考えるアプローチ/頭の使い方、(2)ビジネスの立案、(3)ビジネスの実行、の大きく3つに分けて説明されています。これさえ読めば、どうしたら失敗するかと聞かれても、「大きく3つのパターンがあってね」などと偉そうに説明することができるわけです。なんて便利な。

 まぁそんなことはさておき、ミンツバーグ先生の批判を引っ張り出してくるまでもなく、ビジネスの成功の仕方を学ぶというのはなかなか困難である以上、如何に失敗を避けるか、という視点はあらゆるビジネスの場において重要なことなのでしょう。一方、失敗したビジネスパーソンは、成功したビジネスパーソンに比べその経験を外に多くを語ろうとしないことが一般的です(『日経ビジネス』に「敗軍の将兵を語る」という連載はありますが)。そこが経営学で失敗をベースにした研究を行うことのむずかしさの一つだと思うのですが、そのビジネスの失敗を体系的にまとめたという意味においても、意義深い一冊なのではないでしょうか。